らんぶるライフ はてな版

ボクシングの事書いてます

暗黒大陸から来た男との対決

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 「あいつとやるか」

 その言葉を待ってたのだ!

 あいつとは、他のジムからきている元アフリカ大陸のアマチュアチャンピオン、もちろん黒人。

 やるとはもちろん、スパーリングである。

 前日、元WBAライト・フライ級チャンピオンの山口圭司とスパーリングをしているのを見てからずっ

と手合わせしたかったのだ。

 すぐに、「お願いします」と返事をした。

 その日は、練習は軽くしただけだったので欲求不満だったのもある。

 おまけに、黒人といっただけでみんながビビルので、オイラのやる気をみせるチャンスでもあるわけ

だ。

 体重はズイブン向こうの方が重い様だが、オイラは手合わせできるだけで満足やった。

 奴は、黒人特有の柔軟性のある、均整のとれた筋肉質の肉体をもっている。

 オイラの前にやってるスパーリングを見てると、やたらリーチも長い。

 やっぱり黒人は、スポーツに適した体をしてるなぁと妙に感心したもんな。

 ただ、アフリカンアメリカンの様な陽気さはなくおとなしそうな感じやった。

 まぁ、あくまでオイラのイメージなんやけど。

 オイラの前にスパーリングしてた奴と交代してリングインする。

 いつの間にかリングの周りに人だかりできてるので、妙に緊張感とうれしさがこみ上げてきた。

 元来、目立ちたがり屋やから、

 「いっちょう、えぇ所見せたろ」

 という、しょうもない欲が出てくるのだ。

 「カーン」 ゴングが鳴りグローブを合わせる。

 まずは軽くジャブを打って来た。

 相手のパンチをガードすると、「ズシッ」っとした重みが伝わってくる。

 (やばい!軽いジャブでもこんなにパンチあるんかよ!)

 しかし、ギャラリーの手前ビビルわけにもいかない。

 相手はリーチも長いし、元アマチュアチャンピオンでテクニックもある、距離をとられては不利なん

で、オイラの得意の距離を詰めてのインファイトで勝負!

 強引に相手の懐に入って連打を放つ!

 さすがに元アフリカ大陸チャンピオンだけある、なかなかクリーンヒットを許さない。

 だが、相手も、オイラのやり方に少し戸惑ってるみたいではある。

 接近して連打して、打って打って打ちまくるケンカボクシングを続けた。

 たぶんアマチュアには、オイラのようなタイプはあんまりおれへんやろうから、相手がやりずらそうに

しているのがわかった。

 周りのギャラリーから、

 「怒らせろ!」とか「いってまえ」

 なんてぶっそうな声も聞こえてくる。

 お調子モンのオイラのこと、調子づいてもうた。

 しかし、良かったのもここまでやった・・・

 オイラ攻撃のことしか考えないんで、ガードが甘いしディフェンス勘も鈍いんで、アゴにえぇパンチを

貰った。

 一瞬、意識が飛んでもうた。

 すぐに立ち直ったのだが、メキシコ人トレーナー、元WBC、L・フライ級チャンプでもあるヘルマ

ン・トーレスは見逃さなかった。

 「コノ、ラウンドで終ワリネ~」

 片言の日本語が聞こえた。

 少しあせって又エェところ見せようとするのだが、距離をとられ、リーチ、スピード、パンチに技術す

べて向こうが上だということを実感させられる。

 又インファイトに持っていくべく、強引に中に入っていく。

 その時!一瞬に自分がパンチを貰ったのもわからんようなタイミングで、アゴを打ち抜かれてしまっ

た。

 その瞬間、足の先まで電気が走ったような感覚が走り、ガクッと腰が落ちてもうた。

 何とか、倒れずに耐えたんやけど、案の定ヘルマン・トーレスに止められた・・・

 「モウ、ダメ、オワリネ~」

 まだ、出来るというそぶりを見せたが無駄だった。

 まぁ、しゃあないわ、完敗やね・・・

 言い訳の余地もない、自分が弱かっただけなんやから。

 ただ、帰るとき、悔しさはなく、諦めだけが自分にあるのがさびしかった・・・

  (了)

 解説

 久しぶりに、大阪シナリオ学校時代の文章をアップしますわ。

 まだ少し残ってるんやよね。

 この文章は、何もお題目は決まってなく、原稿用紙何枚かに、何か書いてくるようにって言われて書い

たんやと思うわ。

 で、この暗黒大陸というのはもちろんアフリカ大陸のことなんやけど、読ませた子になんか差別的って

言われた記憶がある。

 暗黒大陸ってつけた理由はたいした理由なく、子供の頃読んだ本に、大航海時代にアフリカ大陸は、な

ぞの大陸で、暗黒大陸と呼ばれていたって書いてたのがずっと印象に残ってただけなんやよね・・・

 で、この黒人選手の事を解説すると、緑ジムに所属していた、フェザー級のランカー、アイザック

セントワのことである。

 セントワは、オケロ・ピーターと一緒に緑ジムにスカウトされて来たんとちゃうかな?

 結構、期待されてたのに東洋タイトル挑戦に失敗した後、尼崎ジムの後に日本チャンピオンにもなった

洲鎌栄一に敗れてそのままフェードアウトしてもうたんやよなぁ・・・

 実際はどうか知らんけど、女におぼれて練習せぇへんようなったって聞いたことあるんやよね。

 がんばって強くなってほしかったんやけどな~

 このスパーの後山口に

 「体重ぜんぜん違うやん」

 っていわれたけど、そのときは「お前もやんっ」て思ってたけど、山口とオイラじゃディフェンス能力

がまさに雲泥の差やからなぁ。

 あいつは、パンチもらわないから結構大きい相手としてたもんな。

 最後の

「あきらめだけが・・・」

 なんやけど、一度やめてカンバックした後はなんか負けん気がなくなったというか、悔しいという気持

ちの前にやられた言い訳ばっかり考えるようになったんやよな。

 もう、心が折れてたんやろな。

 それがわかって寂しかったんやよね。


 写真はボクシングマガジンに出ていたセントワの記事の写真ですわ~
 

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