らんぶるライフ はてな版

ボクシングの事書いてます

カーン博士の肖像

イメージ 1

 今回は、白井義男さんを世界チャンピオンに育て上げたアルビン・R・カーン博士のことが書かれた「カーン博士

の肖像」の紹介を。

 この本の作者はボクシンマガジン元編集長でアンラッキーブルース異邦人の拳の作者でもある、山本茂。

 アルビン・R・カーン博士はGHQの要請で日本の生態系を調べるために派遣されたらしい。

 当時、日本は敗戦後まもなくて貧しい時期だったのだが、アメリカは戦勝国なのでみんなリッチなはず

なのだがカーン博士は凄いみすぼらしい格好をしてた。

 初めて、ボクシングジムに現れたときに外人ホームレスと思われたみたいやった・・・

 カーン博士はユダヤ系の裕福な家庭で育ち、頭も良く博士号も取るぐらいのエリートだったがかなりの

変り者だったようですな。

 カーン博士はボクシング経験はないのだが、アメリカではレスリングのコーチをしていたとのこと。

 自分の生物学の知識などを活用して一流のボクサーを育ててみようと思ったんやろうな。

 趣味にのめりこむ人やッタンやなぁ~(笑)

 でも、最初にコーチをした選手は、基本ばかりを練習させるカーン博士に嫌気がさして早々にコンビは

解消したらしいが・・・

 その後に出会うのが白井氏である。

 カーン博士は白井氏の動きを見て、

 「あれはチャンピオンか?」

 と聞いたらしい。

 周りは失笑モノだった・・・

 当時、白井氏は、戦争で腰を痛め引退を考える状態のボクサーだったのだから。

 しかし、カーン博士は、白井氏の才能を見出したのだ。



 「ナチュラル・タイミング、相手との距離を測定し正確に加撃するために鋭い神経と肉体との働き、そ

れもその行動の1コマ、1コマをすべての筋肉に針の先ほどの狂いもなく一致させ、完全な行動に移せる

能力なのであって、それが具体的に表示されたものは無理のない滑らかな動作となりスピードを生み正確

さを持たしバランスを保ちそして恐るべき打撃力となるのである」

 

 白井氏にはこれがあるというのだ。

 通訳を介して白井氏と契約を交わしたカーン博士は、トレーニングを開始する。

 しかし、延々とジャブの繰り返しだった。

 周りは白井氏に同情したが白井氏はこれを続けた。

 ここが白井氏の偉いところやよな。

 ボクシングやるような奴は我が強いのが多いし、選手としてある程度行った人は基本よりも新しいテク

ニックを教わりたがるモンやけど白井氏はまじめにやり続けた。

 まぁその分良い目にもあってるんやけどね。

 カーン博士はアメリカ人やから、食料がふんだんに手に入るんで、他の日本人が食料に困っているとき

に白井氏はステーキなんかをご馳走になってたみたいやから。

 しっかり栄養をとって腰痛も良くなり、白井氏の快進撃が始まる。

 
 白井氏がチャンピオンになれたのは、もちろん才能があったからなんやけどカーン博士がおらんかった

ら絶対にチャンピオンにはなれなかったのは確か。

 それは、食料援助や、カーン博士のトレーナーとしての力量だけではない。

 カーン博士がアメリカ人で、当時の世界フライ級チャンピオン、ダノ・マリノがアメリカ人であったと

言うことも重要な要素である。

 まぁただアメリカ人というだけで、同じアメリカ人のカーン博士が簡単に交渉が出来たというわけでは

なくダド・マリノのマネージャーが日系人だったというラッキーもある。

 この時代は、世界タイトルは1つしかなく、階級も8つしかないので世界には8人の世界チャンピオン

しかいない時代。

 そう簡単にタイトルマッチを組めるわけもなくチャンピオンと日本でノンタイトルをするために招聘す

ることから始めるのだが、マネージャーとしてのカーン博士は相当に切れ者ですな。

 
 世界チャンピオンが世界に8人しかいないということを想像すると、本当に特別な人しかなれないのが

わかる。

 今なら、パッキャオや、メイのような存在やよな。

 だから、怪物的強さを想像してビビってまうのが当然ですわ。

 しかし、ここでもカーン博士は、自分の理論を展開して白井氏を安心させるのだ。

 すべてを数値にして納得させるのだ。

 マリノは年だから、スタミナは7、白井は若いから10、パンチはマリノは8だけど白井は10、など

と科学者らしく数値に置き換えるのだ。

 正直こんな数値は信用ならんのだけど、カーン博士はそんなもの百も承知!

 白井氏に自信をつけさせて安心させるためのいわゆるカーンマジックだ!(そんな言葉ないけど)

 エディさんもそうやったらしいけど、ボクシングのトレーナーというのは技術を教えるだけではなくボ

クサーのメンタルも支えて盛り上げるのがうまい人が名トレーナーになれるんやろうな。

 
 そうこうして、白井氏を世界チャンピオンに育て上げ、防衛を重ねさせていくのだった。

 カーン博士と白井氏はただのマネージャーとボクサーとの関係ではなく本当の家族のようだった。

 カーン博士は生涯独身だったのでゲイ疑惑もあるのだがその辺りは真相はわからないけど一応本の中で

もそこに触れられている。

 ただ、白井氏にはゲイ的にかどうかは別にして本当に愛情を注いでいたみたい。

 だからこそ、白井氏もそれに答えていたのだ。

 カーン博士は晩年は脳軟化症という病気に犯され、記憶も定かではなく子供の頃に退行したりと色々困

ったこともあったようだが、白井氏はカーン博士が78歳で亡くなるまで世話をしていた。

 どんなに世話になった人でも平気で裏切ったりするこの世の中、美談と言っても良いでしょうな。

 二人は今頃、天国でジャブの練習してんのかなぁ~(笑)

 
イメージ 2
みんな袴田事件に関心持ってくださ~い!by袴田事件、関心持とう委員会

毎月第二土曜日の午後七時より袴田秀子さん宅で浜松 袴田巌さんを救う会の定例会


 ↑  詳しいことが知りたい方は、0532-61-4269  福井英史氏まで
        
NAボクシングジムホームページ